研究業績
日本マンガ学会『マンガ研究』 29, 56-73 (2023)
テレビアニメ『ゲゲゲの鬼太郎』第3シリーズにおける妖怪観の一考察――なぜ鬼太郎はリメイクされたのか――
著者
坂本茜
カテゴリ
査読論文
Abstract
【要旨】
本稿では、1985~88年に放送されたテレビアニメ作品『ゲゲゲの鬼太郎』第3シリーズについて、原作マンガおよび過去シリーズとの比較分析を行う。この第3シリーズは、制作陣やキャスト陣を一新したリメイク作である。また、リメイクに際して大幅な改変が施されている。その変化を抽出し、加えて制作陣の意図を企画書やインタビューから解明していく。
決定的に変化しているのは、人間と妖怪の距離感である。原作における妖怪は、人間の生活に溶け込んで暮らしていた。しかし、第3シリーズの妖怪は人間に破壊されゆく自然を象徴する存在として登場しており、両者の隔絶が顕著にみられる。その背景には、合理的かつ不毛な社会を、人間と妖怪の相克を通じて描き出そうとした制作陣の意図があったと考えられる。